所有出来ないひと

欲しいクルマは数あれど、所有するのは遠い夢。

自分はクルマを直すということを仕事にしてしまったので、自分で好きなクルマを所有するということをしていません。まあ経済的に買えないというのもありますが、お金があったところで好きなクルマは買わないですね。お金があったらクルマを直す設備に使います。ま、これは毎月返済であっぷあっぷしながらお金なくても借りて使ってますけども。とにかく仕事で一日中クルマ直してたら、正直、自分のクルマに手を掛ける余裕がないです。

でも、欲しいクルマがあるのを修行僧のようにひたすら我慢してるのかと言えば実はそうではなく、私の場合は自分の工場に好きなクルマたちを入庫させるということで精神を安定させています。これまで長い時間を掛けて、自分の好きなクルマたちが入庫するような工場の雰囲気を、お客さんと共に作ってきました。何系の専門店なんてことは一言も謳ってないですが、長年掛けて作ってきた雰囲気だけがあります。

多分、昔やってたショップから入るパーツのみの塗装とか、ディーラーの仕事をずっと続けてたら、自分では好きなクルマを買ってそれをいじってたと思います。ディーラーからの入庫は新しいクルマばかりでしたから、正直、仕事仕事してて割り切りがスパッと出来ると思うんですよね。

でも今は趣味性のあるクルマが入庫するようになったので、仕事仕事してないというか、自分の趣味もそこで昇華される感覚があるんですね。だから、やたら明細に記載されないところまで手を掛けちゃう。「趣味を仕事にしちゃいけない」とはよく言いますが、私は完全に趣味と仕事がべったり貼り付いちゃってます。だから自分では所有しない。おもしろいでしょ。

所有しないほうがいいんです。満足しちゃうから。私いつもクルマお預かりして、事故ではない古いクルマをリフレッシュするレストアだのってやってるでしょ。いつも作業しながら欲しくなってますからね。「いいなぁ、これいいなぁ」って。でも実際は自分のものにはならない。でもそれが作業のモチベーションを保つ秘決になってるのは間違いありません。

なんていうんでしょう、クルマだけじゃなく、物って、めっちゃ欲しいけど買えなくて、でもめっちゃ欲しくて、カタログ集めたり、展示品見に行ったりしてる時って一番テンション上がってないですか?

あのテンションをそのまま持ち込んで作業のモチベーションに転換してるような、なんかそんな気がします。

 

じゃないと仕事でレストアなんか出来ないよ〜