集塵装置

うちの工場は両サイドを囲われるように北側と南側に丘陵が続いていて、そのあいだに間口を東側に向けて建っています。そのためか風が吹くときにはほぼ工場の中へ向かってきます。

鈑金の仕事というのは塗装を剥がしたりパテを研磨したりなにかと埃が出る作業です。なので、風が吹けばその埃は工場奥に向かってきて、そこで撹拌されつつしばらく漂います。そんな場所での作業は、人にとってとても環境がいいとはいえません。

修理に関わる仕事は、問題解決能力というものがとても重要になると思います。壊れたものを直すというのは十分に問題解決能力です。それが経営に関わる立場であれば仕事そのものだけでなく仕事の環境に対しても問題解決能力が必要になるかもしれません。

どんなにサイト映えする良い機器や工具を揃えても、ビフォーアフターを載せて反響があったとしても、写真には写らない埃だらけの空気が充満した環境での作業だったのなら人がしんどいですし、そんな、人にしんどい思いをさせなければなりたたない仕事では今後担い手もいなくなるでしょう。

永遠の0』という小説で、凄腕零戦パイロットの主人公が「私はこの機体を作った人を恨みたい」というセリフがありました。世界最高の性能を持った艦上戦闘機 零戦パイロットであることに誇りを持っていた主人公ですが、その高性能ゆえに無茶な作戦を立てられてしまうことに嘆きます。ラバウルからガダルカナルへ海の上を3時間以上の距離を飛んで、向こうで戦闘をしてまた3時間以上の距離を返ってくるという、パイロットに過酷を要する作戦です。これは、単座戦闘機では世界最長の航続距離と世界最高の戦闘力という相反する性能を両方合わせ持った零戦だからこそ可能なことですが、そこには操縦している「人」がいるのを考えているのか、ということです。こういう、人に無茶をさせなければ成立しない作戦思想が後の神風特攻へとつながっていき、そこで主人公は命を落とします。

道具はもちろん重要です、しかし、それを使うのは人です。人が良い環境で仕事をできるようにしたいです。

埃の問題に対しては、換気扇をつければ済むのですが、それだと別の問題が出ます。民家がありますから埃をそのまま外に出すのは問題ですね。そこでサンドブラスト製作で得たノウハウです。ここに使った排気ユニットと同様の構造のものを工場の奥へ設置すれば、この問題を解決できるのではないか、ここに設置すると排気ユニットというより集塵装置になりますね。そんな風に考えていたのを、いよいよ作ろうと設計を始めました。

設計といっても自分で作るから、ポンチ絵だけですけどね。