むつみ

やる前にこだわってることと、実際に行うことで出てくる感情には随分と違いがあって、いくら前もって想像してみても、実際のことをちゃんと把握はできないものです。

私は、室内で動物を飼うのが嫌ですが、あるとき縁あって柴犬の子犬をもらうことになりました。室内で飼いたい嫁氏に対し、私は絶対反対で外で飼うつもりでした。

しかし、ここで事件がおこります。

もらってきたその日に、私の不注意から、その子犬に逃げられてしまったのです。

時期は1月、連れて帰ったのが夕方でもう日が暮れる頃でした。

嫁氏が運転で助手席に子犬を抱っこした私、その子犬は車が苦手なようで、途中でゲロを吐いてしまいました。私の服だけで留めてなんとか家に辿り着き、シートを汚さないように、まずは車酔いしてヘロヘロになってる子犬を地面に置いたんです。ふらふらしてる子犬、私もゲロをこぼさないようにそろりと車から降りたら、もう、子犬の姿がありませんでした。

あたりは真っ暗、見失った子犬を探しましたが、その日、見つかることはありませんでした。

もう、この時点で、見つかる気がしません。そりゃそうです。つれて来ただけで、まだ飼ってないんです。子犬にしたら、帰る家にはまだなっていないのです。

とにかく暗いところで探してもどうにもならないということで、その日は探索を諦めたんです。

明けて次の日、うちは山を背負った場所にあるので、もしかしたらそこに潜んでいるかもしれないと、そこに入っていきました。そしたら、なんと!そこで、子犬とばったり出くわしました。

捕まえようとする私に対して、もちろん逃げようとする子犬、ここで第一回、大捕物帳が開始されます。走る子犬を追う私、足場の悪い山のなかを追いかけっこです。子犬にしても足場が悪いのでしょう、道路に出ていきました。私も走って追いかけますが、子犬といってもさすが柴犬、すばしっこくて追いつけません。道路に出て家の方に逃げてく子犬、追う私、家の囲いでくいっと90度転回して逃げてく子犬に私の足がついていかず、子供の運動会のお父さんばりに、そこで大転倒。また、子犬は山の中に消えていきました。

残念ながら取り逃がしましたが、ひとつ、山の中に潜んでいるというのが分かり、これはなんとか保護できるかもしれないと一縷の望みが出てきました。

 

つづく