自己責任

なんでこんな単純なことに気がつかなかったんだろう。というようなことに気づいて、ひとつ問題が解消されつつあります。

クルマの、外せる部品については乗用車のボンネットも入る大型サンドブラストがあるので、それでサビ落としはできますが、残った本体ボデーの方で、局部的にサビにブラスト掛けたくなる場面があるから、そういう局部的に使えるブラスト機を作れないかなぁ、という話は前に書きました。書きましたが、これは当面必要なさそうです。

ボデーのサビについては、落として済む程度であればグラインダーにべベルワイヤーやカップワイヤーを付けてやってましたが、それだと奥まったところが不十分で、そういうところはブラスト機じゃないと無理かなと思っていました。なぜ奥まったところが不十分になるかというと、ワイヤーは細身のものもあるのでそれはいいんですが、ワイヤーが細身でも、それを付けているグラインダー本体が周りに干渉して、思うような形で奥まったサビにアプローチできなかったんです。エアーグラインダーはコンパクトなので、電動グラインダーよりはもっと突っ込んではいけますが、それでも不十分でした。

「グラインダー本体、ここに引っかかるなぁ、手も当たるから届かないなぁ、ワイヤーだけなら入るんだけどなぁ。ワイヤーだけなら入るんだけど、、入るんだけどなぁ、、けどなぁ、、なぁ、、」

ここで、「ああああ!」です。

ワイヤーだけなら入るってんなら、ワイヤーだけ届くようにしたらいいんじゃん!です。早速、雑多に古いネジ類放り込んであるコンテナから手頃な材料引っ張りだしてきて、グラインダーの回転軸を延長させるシャフトを作りました。さらに、極細なワイヤーだと、通常、ドリルなんかのチャックで締め付けタイプの、軸が出ているモノがありますね、その軸自体にダイスでネジ山切るんです。自作シャフトで延長した回転軸の先にこの極細ワイヤーを付けてみたら、さらに奥に届くじゃないですか!これはなかなか具合が良いです。グラインダーはコンパクトなものに、ということばかり考えていましたが、そうじゃないですよ。回転軸の長さですよ。なんでこんな単純なことに気がつかなかったんだろう。これ、とにかくエアーグラインダーとの組み合わせというのがミソ。ワイヤー先に力入れやすい本体持ち手と、手元レバーで微妙な回転の調整をしながら作業できるというのがポイントになります。オンでマックス回転になる電動グラインダーでは無理ですね。

ボデーのホイールハウス内とか下回りなんかは、アンダーコートが塗布されています。これってブラストだと落ちないんですよ。だから、ワイヤーと併用しないとならないというのは、もともとあるんですけども、ワイヤーで届かないところのアンダーコートやシーリング落としは、自作の細身のスクレッパーで落としてました。これが、ワイヤーで全部いけちゃえば、塗装もシーリングもアンダーコートも全部これだけで落とせちゃいます。それならそれでいいですし、ブラストの必要もなくなります。ブラストはその作業自体は楽でいいんですが、クルマって、殻なんですよ。人が乗る空間を持った殻、というんじゃなくて、車体を構成しているパネルがひとつひとつ殻であって、その殻同士を組み合わせてるんです。だから、殻には中の空間がありますから、ブラストは圧縮エアーで研磨剤を吹き飛ばしてサビを落とすので、いろんなところに研磨剤が入り込んでしまうという難点があるんです。だからしっかりきっちりの養生が必要だったりします。

今後入庫予定のクルマでは、ボデーに使えるブラスト機がいるな、どうしようって、それで頭がいっぱいでしたが、無くて大丈夫じゃないかな。これで製作物は当面、集塵装置の方に集中できます。

さて、ここでひとつ気づいた方もいるかもしれません。グラインダーの回転軸を伸ばしただけで使える物になるのならなんでそういう工具がないの?という疑問です。当然の疑問だと思います。私が知る限り、回転軸が本体から長首を介して先に付いているモノはありますが、回転軸そのものが長いモノは見たことありません。なんでないかと言ったら、たぶん、危ないからだと思います。回転軸に余計な負荷も掛かりますしね。ずっとサビと戦ってきた私だから、これはいいぞ!ってなって使えてますが、はっきり言って普通の仕事では扱いにくいだけです。長い回転軸の先っちょでワイヤーが回転してサビ落とすんです。不安定で、ちゃんと持ってないと、ガッ、ガッ、って暴れます。怪我する恐れもありますし、途中で折れて飛んでいくかもしれません。メーカーはわざわざ数の出ないニッチなところでそんな危ないモノ商品にしません。

そういうリスクは勝手に改造して使ってる人の自己責任ということになりますね。