室内犬

保護した当日、まだ子犬、時期も真冬で犬小屋も用意できていない状況だったので、ひとまず家の中に入れておきました。

一晩いっしょに家の中で過ごして、次の日、嫁氏も仕事があるので子犬をどこにおいておこうかと思いましたが、ちょうど私の実家に父親が手作りしたサンルームがあるので、そこにおいてもらうことにしました。

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ちなみに実家の両親も犬を家の中で飼うという発想がありません。犬は番犬でしかありません。

そしてその日、仕事を終えて連れてかえりました。家の中に入れておくとオシッコをいつされるかわからないので、あたりは暗かったですが軽く散歩をしておこうと思いました。

飼い犬連れて一緒に捜索してくれた友人が、「首輪は抜ける可能性があるから、胴まわりで繋ぐやつの方がいいよ」と、子犬用のお古を持ってきてくれてましたので、それを装着して散歩に行きました。

とにかくいうことをきかない子犬で常にイヤイヤで思うように散歩もできません。しかたがないのでリードを引っ張るんですが、とにかく強情というか嫌がり方が半端じゃありません。友人が言ったように首輪だったら不安でしたが、胴まわりでつないでいるから大丈夫だろうと、そのままぐいぐい引っ張っぱります。すると一瞬、ぬるんっとして、直後、抵抗がなくなりました。

いったいどこがどうなってそうなったのかわかりませんが、抜けてしまいました。(プリンセス天功かよ)などと思う間もなく、拘束具から抜け出した子犬は、猛ダッシュで真っ暗な山の中に消えていきました。

また逃げられてしまいました。またもや首輪も何もない素の子犬状態です。もう絶望しかありません。嫁氏になんて言ったらいいのか。とにかく嫁氏に電話をして事態を説明して謝りました。「大丈夫、もう探してもどうにもならないからとにかく帰ってきて」と言われ家に戻ります。このとき私の頭をよぎったのは保健所職員の「一度失敗すると、もう入らなくなっちゃいますから慎重に」の言葉です。もう、罠で捕まえられないのなら、どうしたらいいのか。

家に戻ると平常を保とうとしていた嫁氏も泣き崩れます。最初の逃亡の4日間の、あの雲を掴むような捕獲劇をまた繰り返すのか。つれてきてからまだ1日しか飼えてません。さすがにもう捕まらないのではないか。このときばかりは2人とも半ば諦めかけていました。

夜動いてもどうにもならないというのは経験済みなので、次の日、ダメ元でまたカゴの罠を仕掛けようということにして、もし捕まったら今度は家の中で飼うという約束をしました。

開けて翌日、また父親お手製のカゴの罠を畑に置いておきました。

私もその日ばかりは仕事も手につかず、ちょくちょく現場に行っては双眼鏡で罠の様子を見ていました。

昼近くにまた現場に見に行くと、父親の姿があります。(あんまりうろうろしちゃうと出てこないから行かない方がいいのに)と思いながら手元をみるとカゴを持って、その中に茶色いものが入ってるのが見えました。すぐさま双眼鏡で覗き込むと、なんと、子犬が入ってるじゃないですか。

同じ罠に2度掛かる犬は稀なのかもしれませんが、その稀がこの子犬でした。

とにかくこうして2回目の逃亡劇はなんなく解決したのですが、さあ大変なのはこれからです。家の中で飼う約束をしてしまったから、ここから排泄物との戦いがはじまります。

トイレシートを置いても、まったくそこにしてくれません。別なところにしてしまうから、今度はそっちに敷いておくと、また別のところにします。延々とイタチごっこを繰り返した結果、ほぼ床全面にトイレシートを置くという事態にまで発展します。おしっこだけでなく、うんちまでするからなかなかキツいものがあります。こんな生活が続くのかと思うと絶望しかありませんでした。

あとから調べると柴犬は特に警戒心が強いから同じ場所にトイレをしない(匂いを分散?)傾向があるらしいです。と同時にキレイ好きでもあるから、自分の生活場所ではトイレをしないということもあるらしく、とにかく今はまだ子犬だから我慢も効かずにしてしまうんだろうと自分を納得させこっちが我慢してました。

月日は流れ成長すると共に、家の中でうんちおしっこをしなくなりました。そうやって今に至るわけですが、壁や床やベッドなど木をかじられたりもしつつ、それでも今では外で飼うなんて考えられません。考えられませんどころか、家の中でもケージもなく自由にさせていますし、一緒の布団で寝てますからね。

実際に飼う前の、家の中で動物を飼わないという強いこだわりも、きっかけは自分のミスの負い目からですが、飼い始めるとまるっきり覆ってしまうという。

そういう、「頭で考えてるのと実際やるのとはまったく違うよ」ということの例え話として軽く言うつもりで書き始めたら、いつのまにやら3部作になってしまったこの日記。これも、考えてたのと実際書くのとは違ってしまっているので、つまりは、いちいちやる前にあれこれ頭で考えてても、とりあえずやらなきゃそこで湧いてくる感情のことまではわからないよ。って話でした。

 

ちなみに、昼間は実家に預ける、というのを続けた結果、犬は外で番犬という発想しかなかった両親も、首輪を付けた状態で預けると「可哀想」って言ってすぐ外すようにまでなってしまいましたとさ。

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